絞り込むことに活路を見出す
ファッション性を切り口に高価格帯を
並べる品番数も絞り込んで
阪急百貨店うめだ本店レディースジーンズ売り場
update: 2012/12/27
阪急百貨店うめだ本店の自主編集レディースジーンズ売り場「ワールドマップジーニスト」。15坪という面積のため、あえて絞り込み戦略を採った。狭い坪数で効果を発揮するための「ワールドマップジーニスト」の絞り込み戦略を見る。
11月21日のグランドオープンに向け、計画を練った。まずジーンズのテイストをヴィンテージ、スタンダード、モードの3つに分類。その上でコモディティー化が進んでいるスタンダードテイストを捨てた。この決断には、グループ会社である阪神百貨店梅田本店の自主編集レディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」の存在も影響している。「ジーンズハウス」は西日本でトップクラスの売上高を誇り、売り場面積は60坪ある。ここが最も得意とするのがスタンダードゾーンの品ぞろえである。ナショナルブランドを中心に中価格帯の品ぞろえが豊富である。
この「ジーンズハウス」との棲み分けを考え、1万円以下の商品とスタンダードゾーンは捨て、ヴィンテージとモードテイストでなおかつ1万円以上の高価格帯に集中した。当初客単価は1万7000円を想定していたが、この戦略が奏功して1万7800円まで上乗せすることができた。また並べる各ブランドも品番数を絞り込み「そのブランドで最も強い品番のみ」(同店・鈴木健三バイヤー)を陳列する。そのため、たった1品番しか置かれていないブランドもある。
ターゲットは20~50代の女性と幅広いが、中心は30代・40代。鈴木バイヤーは「実はナショナルブランドを着用したことがない世代がもう30歳になっている。この世代はファッションジーンズで育ってきた世代。10年後にはこの世代が40歳になる。この世代を取り込むためには『ファッションとしてのジーンズ』という切り口が必要にならざるを得ない」と指摘する。その上で「各百貨店のジーンズ売り場は縮小傾向で、改装によって無くなった百貨店もある。そんな状況において、坪数は小さいが4階の中央にジーンズ売り場を設置したのは『ジーンズをキチンと打ち出す』という当社の決意の表れです」と説明する。
選択肢は広ければ広いほど良いと考えられがちだが、絞り込むことで活路を見出そうとする阪急百貨店うめだ本店の戦略は、苦戦するジーンズ業界にとって一つのヒントとなるのではないだろうか。
(ファッションライター 南充浩)